伝統芸能を携えて全国各地を巡る旅日記

伝統芸能を上演する民族歌舞団「花こま」の活動をお知らせいたします!

車人形(背柱型)の原寸図を描いてみる〔兵庫県姫路市〕

今日は、車人形(背柱型)の原寸図制作に挑戦してみます。自分の中にあるイメージを具体的な図として表せば、自分だけでなく今後色んな人が人形製作に携われる事ができるようになります。それでは始めていきましょう!

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121103018j:plain

手に持っているのは、この人形の一番の特徴となる「背柱(せちゅう)」で、人形遣いの装具に装着し、人形の体を支える役目を果たします。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121104020j:plain

大先輩が製作され、これまで何度も手直しをして使い続けてきた人形ですが、今回、新しい演目用に右の「かしら」を使った人形を今回製作致します。そこで「原寸図」を書いてみる事にしました。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121104353j:plain

ちょっと試しに、「かしら」を入れ替えて見ましょう!衣装は同じなのに「かしら」が替わるだけで、まったく違う人物となりました!昔の人々はこうやって、色んな「かしら」を作り、これら人形を使って色んなお芝居を楽しんできた、そんな一端を感じる瞬間でした!

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121105432j:plain

人形遣いの方が現在使用している人形を装着してもらい、必要な個所の採寸をしました。「ものさし」を前後に置いて「スマホ」で撮影し、後で拡大しながら寸法を確認して行きます。 

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121105842j:plain

見えにくいですが、人形遣いの体と人形を支えている「背柱」を渡している装具の地面からの高さを計っています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121110036j:plain

人形遣い目の位置を計っています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121110151j:plain

人形の目の位置を計っています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121110233j:plain

人形遣いはこのような黒い木の箱に腰かけて人形を操作します。この箱の下には車が付いていまして、「箱車(はこぐるま)」と呼んでいます。人形遣いが座る座面の床からの高さを計っています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121110454j:plain

画面上方の装具が人形遣いが体に装着するものです。下方の物が「背柱」と呼ばれるものです。これらふたつを組み合わせて、この上に人形を乗せると、人形が立っている姿勢が生まれます。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121110728j:plain

先ほどのふたつの装具を組み合わせたところです。この様に組み合わさります。意外と荷重がかかるので、これまで改良を重ね、現在ではこのような金属の部品を使用しています。決して「車人形(背柱型)」用の部品として売られている訳ではありません。電気制御盤などに使用される電気コードを通すレールを流用しています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121111237j:plain

「背柱」の上部の写真です。一番上に人形の肩板を乗せます。丸い部品の所に「かしら」の首の下に棒が付いていますので、その棒をこの丸い部品の中を通し、塩ビの所で受けて、人形の「かしら」を乗せます。厳密に言えば、人形の体と、「かしら」はそれぞれ別々に乗せているという事になります。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121111725j:plain

いきなり、鳥の写真が出てきました!これは鳥の模型の写真です。模型とはいえ羽の雰囲気がよく出ているのをお感じ頂けますでしょうか?私達の使う人形も、これまでは本物の人間の髪の毛を使った「かつら」を人形に装着してきましたが、今回、「焼きごて」という技法を使い、この鳥の様に細かい羽毛を表現している様に、人形の髪の毛も「かしら」の木肌に同じように表現できないかと思っています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121112220j:plain

模型の世界ではそういう技法が用いられ、もう模型と本物の見分けがつかないほど精工な仕上がりとなっています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121112514j:plain

人形の「かしら(背柱型)」を上下反対にして、下から見た状態です。首のところに棒を差し込んで固定している様子をご覧頂けると思います。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121112734j:plain

先ほどの背柱に「かしら」を装着してみました。この様な形で「かしら」が乗っています。左右にのみ動く事ができます。ここで注目して頂きたいのが、首の下づらの形状です。斜めに切れているのが分かります。これは、「文楽人形」「車人形」と受け継がれて来た証とでも言うべき特徴です。首から下に伸びた棒を「胴串(どぐし)」と呼び、人形遣いが直接手に持ち「かしら」の表現をして来た歴史がここに刻まれています。私達は「かしら」を直接手で持たず、人形遣いの頭で「かしら」を操ります。「文楽人形」「車人形」共に、自由自在に色んな角度で「かしら」を表現して見せる事ができますが、私達の「かしら」はこの様に左右に動きはしますが、この位置で固定して支えています。左右に動く程度なので、思い切って斜めに切れていた首を受け皿と同じ水平で作ってみようと思います。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121112932j:plain

これは、首となる材料です。下づらの形状が既存の首の形状と違っている様子をご覧頂けますでしょうか?分かりにくいですよね。完成した時にご説明致します。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121114335j:plain

この背柱と人形遣いがとがどの位置で装着され、その時に人形の体はどの位置に立つ事になり、その時の「かしら」の受けがどの位置に来るのか、それによって、首のどの位置に胴串を装着してい行けばいいのかを割り出さないといけません。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121114655j:plain

そうやって割り出された寸法、実際に人形遣いが装着した状態で採寸した寸法をこのような「原寸図」に落として、これから製作しようとする人形の「原寸図」を作ります。着物でも実際に「原寸図」を作り、デザイン、染め、縫い合わせ等を行っています。

f:id:MinzokukabudanHanakoma:20210121114957j:plain

人形の背の高さから、おかしくない手の長さ、かしらの大きさ、足の長さ、腰の位置、それら全体のバランスをと考慮しながら、人形の設計図ともいうべき「原寸図」を作って行きます。いかがでしたでしょうか?「車人形(背柱型)の原寸図を描いてみる」でした!