伝統芸能を携えて全国各地を巡る旅日記

伝統芸能を上演する民族歌舞団「花こま」の活動をお知らせいたします!

実践!あなたにでもできる人形製作(背柱型車人形)〔兵庫県姫路市〕

本日は、人形の「かしら」と「首」を連結させる「竹ひご」を通す穴をあける作業に挑戦します!指導講師:松本敏彦氏

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「かしら」を彫り出す前のブロック状態の方が、ボール盤にクランプで固定しやすいので、人形の「かしら」と「首」を連結させる「竹ひご」を通す穴は空けやすくなります。本日は、既に「かしら」を彫ってしまった後に、どのように穴を空ければいいのかに挑戦してみます。

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「かしら」と「首」との関係性を表した型紙です。「かしら」と「首」の連結位置なのですが、私達は「かしら」の肉厚強度の関係から写真通りの位置にしています。連結位置の「かしら」と「首」の間に隙間ができない様にするためには、できるだけ「かしら」の外側に穴を空けるのがベストなのですが、やはり、肉厚強度の関係から写真の位置とするのが現在考えらる最適だと思っています。

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次に、彫り出した「かしら」に穴を空ける位置を割り出す「けがき」する工程です。

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今回は講師手作りの「けがき」工具で人形「かしら」に「けがき」をしてみます。図面の寸法通りの位置に、半分に割ってありますので、穴を空けようとする辺りに、その割っている面から10mmの位置に「けがき」ます。

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引き続き「けがき」ます。結束バンドでシャープペンシルを固定しているところなど、手作り感満載です!この様にすれば、工夫次第で高価な道具が無くても誰にでもできる訳です!

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次に、彫り出した「かしら」の正中線(せいちゅうせん)を頼りに、まっすぐ垂直に固定します。正中線とは、製作頭初からの「かしら」の真ん中を表す線の事です。この線はとても大切で、この線を頼りに、左右のバランスをとったり、この様に穴を空ける時の基準ともなりますので、彫り進めて消えてしまった時は、その都度「けがく」事が大切です。今回は9mmの位置に「けがき」ます。線が交わった位置が穴を空ける位置となります。

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今回は、既に頭を彫ってしまった後に穴を空けるという事に挑戦しています。「けがき」ができても、ゆがみなく穴を空ける事は至難の業です。そこで登場するのは講師特製「ハサミ板」です。ゆがみの少ない板に写真の様にボルト4本で先程の「かしら」を挟みこみ固定します。この時も真っ直ぐ、傾きが無いように挟み込む事が重要です。そのために、あらかじめ真っ直ぐになるように、ピンで固定できる様にあなを空けておきそれを利用します。

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そして、ついにボール盤で穴を空けていきます。今回は3mmのキリを使います。斜めの所に穴を空けていく訳ですから、理論上、穴が空いていない状態で力を加え過ぎると、キリが側面から逃げてしまいますので、確実に穴が空き始めるまでは、慎重に丁寧に力を加えましょう。木くずがキリの溝に沿って出てきます。この穴はデリケートなので、少し掘り進んではキリを戻し、木くずを掃除機などで吸い取りながら、ゆっくり慎重に彫り進んで下さい。

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キリの長さには限界があります。ひっくり返して逆から穴をあければいいのじゃないかと考えがちですですが、しかしながらそう上手く穴を空けれるものではありません。そこで登場するのが、このロングストロングのキリです。しかも、刃先は少ししかなく、既に彫り進んだ穴を余計に穴を大きくしてしまう心配もありません。あくまでも3mmの穴を丁寧に貫通させる事が大切です。この首の正確な動きが担保されないと、変な動きの人形が出来上がってしまいますので、最後まで慎重に丁寧に穴を空け続けて下さい。いくら素敵な「かしら」が彫れたとしても、この穴が真っ直ぐ空けられるかどうかが明暗を分けますので、注意しましょう。

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はい!遂にやりました!貫通した穴に3mmの竹ひごが見事に違和感なく挿入できました!

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次に、「首」が「かしら」に挿入できるように、「首」用の穴を彫り進めます。どの位置でおおよそどのくらい彫り進めればいいのかを型紙を使っておおよその寸法を確認しておきます。

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目測をつけたおおよそのところまで慎重に掘り進めます。

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「かしら」は「木」ですので、作業によっては色んな方向から掘り進める事となります。ところが、「逆目」という厄介な場面に遭遇する事もしばしばです。そんな時、ひねりながら掘り進める「技」を使うとか、自分の使いやすい道具を選んで、「逆目」で思いのほか大きく材料が欠けてしまうのを何とか食い止めましょう。

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実際の作業の様子。

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ノギスの様な工具があれば、型紙通りの寸法に彫り進められているのかを随時確認しながら掘り進めましょう。

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ある程度彫り進めて参りますと、竹ひごに「首」の型紙を通して、実際に首が「かしら」に連結した状態を確認しながら掘り進める事ができます。

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「首」が挿入できるように「かしら」を彫り進め、実際に「首」の型紙を竹ひごに通してみました。左側の「首」の型紙に何か付いているのが分かります。実は、人形の「かしら」はブラブラの状態で、「首」と連結されている訳ではありません。「ばね」の力を利用して常に下を向くように仕掛けられています。人形遣いは自分の頭と糸で人形の「かしら」を結び、頭を後ろに引っ張る事で、人形の「かしら」を動かしています。

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「首」の材料と型紙を並べてみました。「首」の型紙に沿って材料に「けがき」をしています。その「けがき」を元に次に「首」を掘り進んで行きます。

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こちらは、講師先生が「日本工業新聞」で見つけた「ソーガイド」です。私達素人は大工さんのようには行きません。「けがき」に沿って「のこぎり」で切る事さえ、簡単に歪んでしまい、思い通りには切れないものです。そこで登場するのがこの「ソーガイド」です。この「ソーガイド」に挟んで「のこぎり」で切っていきますと、まー不思議、見事に真っ直ぐ、ゆがむことなく思い通りに切れてしまうから不思議です。精密な、ミリ単位で切らなければいけない作業など、この「ソーガイド」はおすすめです。

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「ソーガイド」を真横からみたところ。

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お時間となりましたので、本日の作業は終了となり、「首」の製作は次回となります。本日は、

①「かしら」と「首」を「竹ひご」で連結する穴をどのように空ければいいのか 

②「かしら」の中に「首」を挿入するのにどのように彫り進めればいいのか 

を実演しました。次回は2020年1月23日に次の作業に進みますので、皆さんお楽しみにお待ち下さい!興味のある方、見学自由ですので、どうぞお気軽にお越し下さい!